Italdesignが蘇らせたNSXという「思想」──オーナー目線で感じた違和感のなさ

正直に言うと、「NSX復活」という言葉には、これまで何度も肩透かしを食らってきました。ですが今回、Italdesignが発表したHonda NSX Tributeを見たとき、その印象は少し違いました。派手さよりも、NSXというクルマが元々持っていた“空気感”を丁寧にすくい上げている。そんな印象です。
初代NSXは、速さだけで語られるクルマではありませんでした。視界の良さ、扱いやすさ、そしてドライバーが自然体で運転できること。その思想が、セナの名前とともに語られてきたわけですが、今回のItaldesign版は、そこを無理に現代化しようとしていません。
ボディラインは確かに現代的です。ただ、筋肉質に見せようと無理をしていない。黒でまとめられたキャビン周りや、低く抑えられたフロントの視覚的重心は、「速そう」よりも「ちゃんと走りそう」という安心感があります。これは、クルマを長く触ってきた人間ほど分かる感覚だと思います。
SOUPで日々いろいろな車両を預かっていると、デザインと実用のバランスが崩れたクルマほど、年数が経ったときに扱いづらくなることを感じます。塗装の痛み、熱のこもり方、洗車のしづらさ。ItaldesignのNSXは、そういった“後から効いてくる部分”を想像しながら作られているように見えるんです。
これは、コーティングでも同じです。見た目だけを重視した施工は、最初は綺麗でも、数年後に必ず無理が出ます。だからSOUPでは、必ずガスプライマーで塗装の状態を整えてからセラミックコーティングを行います。下地が整っていないと、そのクルマ本来の良さは表に出てきません。
ItaldesignのNSXを見ていると、「ああ、この人たちも同じ考え方なんだな」と感じます。過去をなぞるのではなく、今の技術で、当時の思想をもう一度きちんと形にする。その姿勢が、このクルマからは自然に伝わってきます。
台数が極端に少ないとか、価格が現実離れしているとか、そういう話は正直どうでもいいんです。このNSXは、所有するためのクルマというより、「NSXとは何だったのか」を思い出させてくれる存在。その点で、とても健全な復活だと感じています。
超限定NSXとコーティングの共通点──時間に耐える価値の作り方

ItaldesignのNSXは「few-off」、つまり本当に数台しか作られない可能性が高いと言われています。こうした超限定車を見るたびに思うのが、「このクルマは、何年後にどう見られるかを前提に作られているか」という点です。
一時的な流行や派手な装備に寄せたクルマは、どうしても時間に負けます。でも、素材や構造、考え方がしっかりしているものは、10年、20年経っても評価が下がらない。これは、SOUPでコーティングをしていても痛感します。
セラミックコーティングは、魔法ではありません。だからこそ、下地が重要になります。ガスプライマーで塗装表面を安定させ、余計なストレスを取り除いてからコーティングを重ねる。そうすることで、艶や防汚性だけでなく、「年数が経ったときの疲れ方」がまったく変わってきます。
Italdesignのデザイナーが語っているように、このNSXはノスタルジーだけで作られていません。空力、冷却、視覚的な軽さ。そのすべてが、「性能を犠牲にしないこと」を前提にしています。これは、見えない部分に手間をかけるという意味で、私たちの仕事とよく似ています。

例えば、派手な撥水だけを売りにするコーティングは、数ヶ月で評価が落ちます。一方で、地味でも確実な工程を積み重ねた施工は、オーナーさんが洗車をするたびに「まだいいな」と感じてくれます。ItaldesignのNSXも、きっとそういうクルマです。
価格が高いから価値があるのではありません。数が少ないから特別なのでもない。時間が経っても評価がブレない設計と考え方があるかどうか。その一点に尽きます。
このNSXを見て、「いつか触ってみたい」と思う人は多いでしょう。でもそれ以上に、「自分のクルマを、どうやって長く良い状態で付き合っていくか」を考えるきっかけになれば、それだけでこのプロジェクトには意味があると思います。
SOUPとしても、流行や派手さより、「10年後にどう見えるか」を大切にした施工を続けていきたい。その考えを、改めて確認させてくれた一台でした。


























