なぜ43,000ドルのプレリュードは「高い」と言われるのか
― 日本市場の感覚から冷静に見たアメリカ価格 ―

2026年に復活したホンダ・プレリュードの北米価格は43,195ドルと発表されました。日本円に単純換算すると、為替状況にもよりますが600万円台半ばに差しかかる金額です。この数字を見て、日本のクルマ好きの多くが「さすがに高い」と感じたとしても、それはごく自然な反応だと思います。
日本市場において、600万円を超えるクーペはすでに“日常のクルマ”ではありません。実用性やコストパフォーマンスではなく、価値観や想いで選ばれる領域です。かつてのプレリュードが持っていた「少し背伸びすれば手が届く、洗練されたクーペ」という記憶と比べると、今回の価格設定に違和感を覚える方がいるのも無理はありません。
一方で、アメリカ市場から見た43,000ドルという価格は、日本ほど極端な印象を持たれません。住宅価格や所得水準、ローン文化を前提とした北米市場では、「決して安くはないが、現実的に選択肢に入る価格帯」に位置づけられます。ここに、日本とアメリカの“価格感覚の差”があります。
ホンダが今回選んだのは、日本とアメリカで価格思想を揃えるという、実はかなり勇気のいる判断でした。為替差を考慮したうえで、ほぼ同水準の価値として提示したという事実は、「このクルマはどちらの市場でも同じ意味を持つ存在であるべきだ」という明確な意思表示だと感じます。
実際、日本では「高い」という声が先行しながらも、初期割り当て分は完売しています。価格だけでなく、プレリュードという名前に込められた思想や、ホンダがこの時代にあえて2ドアクーペを出してきた意味を、きちんと受け止めたユーザーが存在したということです。
日本市場は価格にとても厳しいです。だからこそ、価格を間違えると一瞬で見放されます。それでもなお、この価格で勝負したという事実は、今回のプレリュードが単なる復刻モデルではなく、ホンダにとって“次につなぐための存在”であることを物語っているように思います。
プレリュードという思想と、コーティングに通じる価値観
― SOUPオーナーとして感じる「削らない」という選択 ―

SOUPでカーコーティングの相談を受けていると、「もう少し安くなりませんか?」という声をいただくことがあります。もちろん、ご予算の話は大切です。ただ、そのとき必ずお伝えするのは、「削ってはいけない工程があります」ということです。
下地を整えず、密着性を軽視して施工すれば、価格は下げられます。しかし、それでは数年後に残るものがまったく違ってきます。SOUPでは、塗装面の状態を正しく整え、ガスプライマーで被膜の定着を高めたうえで、セラミックコーティングを施工します。これは効率重視ではなく、“結果を大切にする選択”です。
今回のプレリュードにも、同じ価値観を感じます。価格を抑えるために足まわりや内装の質感を簡略化することは、技術的にはできたはずです。それでもホンダは、Civic Type R由来のシャシー構成や、上質なインテリアをそのまま残しました。
アメリカ市場では、プレリュードは「次のホンダを象徴するクルマ」として受け止められています。一方、日本市場では「この価格で出してくる覚悟」に注目が集まっています。日本は誤魔化しが通用しない市場です。安っぽさや中途半端さは、すぐに見抜かれます。
それでも選ばれたという事実は、「この価値を理解する人にだけ届けばいい」という、静かな自信のようにも映ります。万人受けはしないかもしれません。でも、刺さる人には深く刺さる。プレリュードは、そういう存在になったと感じています。
クルマも、コーティングも、最後に問われるのは価格ではなく思想です。何を守り、何を大切にし、どこを妥協しないのか。プレリュードの価格設定を見ていると、その問いをこちらに投げかけられているような気がします。
SOUPとしても、流行や値引き競争に流されるのではなく、「きちんとした工程を、きちんと説明し、納得して選んでもらう」ことを大切にしていきたい。そう思わせてくれる点で、今回のプレリュードは、クルマ屋としても、コーティング屋としても、とても共感できる一台です。


























