マツダ「Iconic SP」が映し出す、時代の潮流とスポーツカーの現実

マツダが2023年のジャパンモビリティショーで披露した「Iconic SP」は、多くの車好きにとって胸が高鳴る存在でした。ロータリーエンジンを発電機として活用し、電気モーターと組み合わせたハイブリッド構成という、マツダらしい独自性を失わないスポーツカー像。かつての「RX-7」を彷彿とさせる佇まいと、伸びやかなプロポーションは、単なるショーモデルではなく「実際に走らせるための意思」を感じさせるものでした。

しかし現実は、情熱だけでは前に進めません。世界的に電気自動車への投資が見直され、特に中国以外の市場では「急いでEVに振り切る戦略」から距離を取り始めています。マツダも例外ではなく、2030年までに電動化開発費を約3,300億円削減する方針を掲げています。この影響で、Iconic SPの市販化は「技術面では可能だが、財務面が最大の課題」という状況に置かれています。

スポーツカーは、メーカーにとって「象徴」であり「誇り」ですが、同時にビジネスとしては利益を生みにくい存在です。SUVが主力となり、実用性と販売台数が優先される今、Iconic SPのような車はどうしても優先順位が下がります。これは業界全体で起こっている流れであり、ただ単にマツダだけの問題ではありません。

しかし、私はこの状況を「諦め」とは捉えていません。スポーツカーは、合理性の外側にある価値を提供する存在です。人がクルマに「憧れ」や「誇り」を感じる理由は、数字や性能だけでは説明できない情緒的な部分にあります。マツダがロータリー開発チームを再編成したこと、ロードスターを大切に育て続けていることは、その情緒を捨てないという意思の現れだと思うのです。

マツダCX-8、徳島県のカーコーティング専門店SOUPにてコーティングメンテナンスを実施。美しく輝くボディが印象的な仕上がり。

私たちSOUPでも、オーナー様がクルマに込めた想いや、購入に至るまでの時間、そしてこれから過ごす日々を大切にしたいと考えています。セラミックコーティングは「艶を出すための装飾」ではなく、長く、丁寧に、思いを保つための技術です。そして、その性能を引き出すための下地形成に重要な役割を果たすのが「ガスプライマー」です。ボディ表面の結合性を高め、コーティングがしっかりと『定着』する環境を作り出す。これは見えない部分ですが、クルマを長く美しく保ちたい方にとって、本当の価値につながる基盤だと考えています。

Iconic SPが歩むかもしれなかった未来に胸を膨らませながら、私たちは現実の中で「今できる最高の選択」を重ねていく。それが、愛車と長く付き合うということではないでしょうか。

スポーツカーが「夢」として扱われる時代と、私たちが守るべき情熱

自動車業界の現在を見つめていると、時代が大きく揺れ動いていることを強く感じます。電動化への転換は避けられない流れでありながら、その進め方や速度は国や地域、そしてメーカーごとに違います。EVの開発費は巨額で、成功が約束されていない領域に挑むには相応の覚悟が求められます。その中で、マツダが「Iconic SP」の実現に慎重にならざるを得ないという判断は、決して弱さではなく、現実を見据えた戦略であると言えます。

ですが、こうした「合理性」の流れの中で最初に削られていくのが、スポーツカーや特別な象徴的モデルであることもまた事実です。販売台数ではなく、「好き」という気持ちや情熱によって支えられている車たち。それらは、数字としては評価されにくい一方で、自動車文化そのものを形づくる大切な存在でもあります。

私自身、SOUPにお越しくださるお客様とお話をしていると、車はただの移動手段ではないと改めて感じます。家族で初めて出かけた旅行の風景、夜遅くに一人でドライブした帰り道に見えた星空、学生の頃に憧れていたスポーツカーにいつか乗りたいと思い続けた記憶。クルマには「人生の時間」が刻まれています。

だからこそ、たとえ「Iconic SP」がすぐに世の中に登場しなかったとしても、そのモデルが示した「夢」は消えていないと思うのです。マツダはロータリーを捨てていませんし、ロードスターのような「人が操る楽しさ」を根本に据えたクルマ作りは今も続いています。

その「楽しさを守る姿勢」は、私たちがSOUPでコーティングというサービスを提供する上でも同じです。セラミックコーティングは単にボディを美しく見せるだけではありません。紫外線、酸性雨、洗車キズ、鳥フンや虫汚れといった日常の外的要因から、大切な車を長く守るための「防御の層」です。そして、その防御性能がしっかりと機能するかどうかは、下地の仕上げと「定着」の精度に大きく左右されます。

 

そこで重要な役割を果たすのが「ガスプライマー」です。コーティングをただ乗せるのではなく、ボディ素材とコーティングシリカ成分が強固に結合しやすい状態をつくりだすことで、時間の経過とともに失われがちな「艶・深み・透明感」を保ちやすくします。表面だけを整えるのではなく、「根本を整える」ことで、長く愛車の美しさを維持することができるのです。

例えば、スポーツカーに宿る「走りへの憧れ」が人の心を動かすように、クルマを丁寧に扱うという行為には、クルマそのもの以上に、その人の価値観が表れます。合理性だけでは測れない部分に、クルマが持つ魅力があるのだと思います。

Iconic SPが示した未来の光景は、もしかすると形を変えて、別のモデルとして実現するかもしれません。重要なのは「気持ちを切らさないこと」です。メーカーも、私たちショップも、そしてオーナーの皆さまも。思い続けている限り、その文化は途切れません。

「大切にしたいものを守る」という選択と、SOUPが果たす役割

クルマの楽しみ方は人それぞれです。スペックを語る人もいれば、デザインに惹かれる人もいます。日々の生活を共にする相棒として扱う人もいれば、週末だけそっとエンジンをかける人もいるでしょう。どの楽しみ方も間違いではなく、そしてそのすべてには「そのクルマを大切にしたい」という共通した想いがあります。

今回話題となっているマツダ「Iconic SP」は、まさにその「大切にしたい」という感情を強く揺さぶったモデルでした。しかし、現実的な事情により、すぐに市販化へと進むことは難しい状況にあります。それでも、私たちは「出ないかもしれないから、意味がない」とは思いません。なぜなら、このモデルが描いたビジョンは、人々がクルマに抱く情緒や憧れの象徴であり、そこには確かに価値が存在しているからです。

クルマはただの道具ではなく、「記憶を運ぶ存在」でもあります。新しい道を走った日のこと、家族が笑っていた後部座席、仕事帰りに寄り道した夜のコンビニの灯り。そうしたひとつひとつの景色が、時間とともにそのクルマの「表情」をつくっていきます。

そして、その表情を長く、美しく、穏やかに保つために、私たちが提供しているのがセラミックコーティングです。表面をただ“光らせる”ためではなく、「これからの時間に、やさしく寄り添うため」の選択肢です。また、その性能を最大限に引き出すためには、下地づくりこそが鍵となります。

SOUPで導入している「ガスプライマー」は、コーティングの膜をただ“のせる”のではなく、塗装表面の構造とコーティング被膜がより強固に結びつくよう、化学的な定着性を高める工程です。これによって、耐久性・艶・透明感が長期間にわたって維持されやすくなり、「美しさが時間とともに深まっていく」ような仕上がりを実現します。

これは一見すると目に見えにくい部分ですが、まさにクルマへの“気持ち”そのものです。すぐに見える輝きだけではなく、未来に向けて価値が続く状態をつくる。手間を惜しまないのは、そのクルマに乗る人の時間と記憶を、丁寧に扱いたいからです。

Iconic SPの未来はまだ確定していません。しかし、それを待つかどうかよりも大切なのは、「自分のクルマをどう大切にしたいか」という一人ひとりの想いです。クルマ文化は、メーカーだけが育てるものではありません。オーナーがクルマにかける愛情と、私たちのような専門店がその気持ちに応える姿勢によって、確かに継承されていきます。

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