ホンダが示す「ソフトウェア時代の協業」という考え方

自動車産業はいま、大きな転換点を迎えています。電動化とソフトウェア化が同時進行する中で、従来の「一社で全てを完結させる」ものづくりの形は、徐々にその持続性を失いつつあります。ホンダの三部俊宏CEOが「ソフトウェア定義車において、一社で全てを開発するのは合理的ではない」と語ったのは、その象徴的な言葉だと感じます。
特にEV領域では、従来のエンジン車とは異なり、車両制御、充電管理、UI、走行性など、多層的にソフトウェアがクルマの性格を決めます。ソフトウェアは常にアップデートされ続けることが前提であり、開発コストも長期に積み上がります。ここに「協業」という選択が現実的な解となりうる背景があります。
ホンダはGMとの協業で、多くの課題と学びを得たといいます。一律の正解がないEV市場において、単独で勝ち筋を明確に描くことは難しい。だからこそ、技術や知見を分かち合うことで、開発負荷を分散しながら、スピードと精度の両立を図るべきだという考え方です。
しかし三部CEOは、単に依存するのではなく「技術的な主導権を持つことが理想」とも述べています。自社が強みを持った領域で価値を生み、それを共有することで、パートナー関係においても“主体性”を維持する。この姿勢に、ホンダらしい誠実なエンジニアリング思想を強く感じます。
SOUPの現場で感じる「協業」と「技術の軸」
私は徳島県三好市でカーコーティング専門店「SOUP」を運営しています。日々、お客様の大切な一台に向き合う中で、ホンダの考え方には深く共感する部分があります。コーティングの世界でも「単に施工すれば良い」という時代は終わり、施工後の状態維持、環境に応じた素材選定、メンテナンス設計など、総合的な“車との向き合い方”が求められています。
例えば、当店が採用しているセラミックコーティングは、ただ表面を覆うだけのものではありません。塗装面と強固に結合し、耐候性・防汚性・深い艶を作る「化学的な結び付き」が本質です。そして、その定着プロセスをより安定させる役割を担うのが「ガスプライマー」です。これは施工者の経験と技術選択によって大きく仕上がりが変わる領域です。
つまり、「素材 × 知識 × 手作業精度」が揃って初めて、クルマの美しさと保護性能が長期にわたり成立します。ここに、ホンダが語る「協業をしながらも、技術の軸は渡さない」という思想に重なるものがあります。
ひとつの技術だけでは完結しない。しかし、軸となる“本質”は人と技術の中にある。この視点は、これからのクルマづくりとアフターケアの時代に欠かせない価値観だと考えています。
クルマが「ソフトウェアで性格が決まる」時代へ

ホンダが語る「ソフトウェアでクルマが決まる時代」という言葉は、単なる業界トレンドではなく、すでに現実として私たちの前に広がっています。走行性能、充電管理、操作性、エンターテインメント、さらには車両診断までもがネットワークを介してアップデートされていく。いわば、クルマは“動くデジタルデバイス”へと進化しつつあるのです。
しかし、どれほど高度なソフトウェアを搭載した車でも、現実世界を走る以上、「外装は必ず環境の影響を受ける」という事実は変わりません。紫外線、酸性雨、黄砂、虫汚れ、水シミ、そして道路を走ればどうしても付着する微細な鉄粉。クルマはソフトウェア化が進んでも、物理的な世界の影響を避けることはできません。
だからこそ、「クルマを美しく守る技術」もまた、アップデートされ続ける必要があります。ここに、私たちカーケアの現場が果たすべき役割があります。
セラミックコーティングとガスプライマーが持つ現代的意義

SOUPで扱うセラミックコーティングは、単に艶や撥水の美しさを提供するためのものではなく、「外的ダメージから塗装を守り、車を長期にわたって維持するための防護膜」として設計しています。特に近年は、新車であっても塗装の膜厚は昔より薄く、環境負荷からの保護がこれまで以上に重要になっています。
そして、そのコーティング性能を最大限に発揮させる基盤づくりとして機能するのがガスプライマーです。ガスプライマーは塗装面とセラミック成分の結合を安定化させる“定着の鍵”となる存在で、施工者が車の状態、塗装の反応性、作業環境の湿度や温度を見極めながら使い分けていきます。
この「判断しながら積み上げていく工程」こそが、情報化・自動化が進んだ時代においても、現場の技術者にしか担えない領域だと私は考えています。
地域で車と向き合うということ

四国の山間地域では、夏は日差しが強く、冬は霜が降り、季節によって車への負荷は大きく変わります。観光、通勤、家族の送迎、軽トラでの仕事。車は生活の道具であり、時に家族のような存在です。その「日常の相棒」を、どれだけ良い状態で長く保てるか。それこそが地域で車と向き合う私たちの役割だと思っています。
ホンダが「協業」を選ぶように、私たちもまた、素材・技術・環境を理解しながら、最適なバランスで“車との関係”を調律していきます。それは派手ではありませんが、確かな積み重ねと信頼によって生まれるものです。
クルマは変わる。しかし、人が手をかける価値は決して消えない。
この想いを、これからの時代にも丁寧に届けていきたいと考えています。


























