クルマは、思い出と人を静かにつなぎ続けてくれる

SOUPというカーコーティング専門店をやっていると、日々いろいろなお客様と車の話をします。新車の納車直後で胸を躍らせている方もいれば、何十年も前から乗り続けている一台を、まるで家族のように大切にしている方もいます。そんな中で、いつも思うのは「クルマは単なる移動手段じゃない」という、ごく当たり前だけれど忘れられがちな事実です。
海外のある記事を読んでいて、強く胸に残ったのは、1990年式の日産300ZXにまつわるエピソードでした。亡くなった叔父さんが大切にしていたそのクルマに乗って、結婚式へ向かう途中、ふと背中を走る冷たい感覚。そこには説明できないけれど、確かに「誰かが一緒にいる」と感じる瞬間があった。理屈ではなく、感覚として。
私自身、コーティングの仕事をしていると「このクルマは、もう一人の家族なんです」と言われることが少なくありません。洗車傷一つにも理由があり、ハンドルの擦れにも時間の積み重ねがあります。だからこそSOUPでは、ただピカピカにするのではなく、その車が歩んできた時間ごと守るつもりで施工しています。

セラミックコーティングは、見た目の艶や防汚性能が注目されがちですが、本質は「残す」ための技術です。紫外線や雨、空気中の汚れから塗装を隔離し、時間の劣化をできるだけ遅らせる。その下地にガスプライマーを使うのも同じ理由で、塗装面とコーティングをより強く、安定して結びつけるためです。
大切な人の記憶が宿るクルマ、人生の節目を一緒に越えてきたクルマ。そうした存在を、次の世代へ手渡す準備としてのコーティング。これは決して特別な話ではなく、クルマ好きの方なら、誰しも心のどこかで感じていることだと思います。
時間を超えて残すために、私たちができること

もう一つ印象的だったのは、祖母が大切にしていたアウディA6の話でした。青を愛し、青に囲まれて生きた人生。その人らしさが、そのままクルマの色や内装に表れている。クルマを見れば、その人がどんな価値観で生きてきたのか、なんとなく伝わってくる。そんな経験、きっと皆さんにもあるのではないでしょうか。
SOUPに来られるお客様の中にも、「親から譲り受けた車なんです」「もう手放そうと思ったけど、やっぱり残したくて」と話される方がいます。そういう時、私は無理に新しさを勧めません。大切なのは“今より少し先まで、安心して乗れる状態にすること”だと思っているからです。
ガスプライマーを使った下地処理は、決して派手な工程ではありません。正直、施工後に見た目で分かる部分でもない。でも、数年後、十数年後に「やっておいて良かった」と感じていただけるための土台です。セラミックコーティングも同様で、今の美しさだけでなく、未来の安心を作る作業だと考えています。
クルマは、使われ続けることで価値を持ちます。ただ飾るためではなく、走り、家族を乗せ、思い出を重ねる存在。その時間をできるだけ良い状態で残すこと。それが、私たちコーティング屋の役割だと思っています。
エンジンをかけた時の音、シートに座った時の匂い、ボンネットに映る空。そうした感覚の一つひとつが、記憶と結びついていきます。この記事のように、ある日ふと「一緒にいる」と感じる瞬間があるかもしれません。その時、そのクルマが変わらずそこにあるように。SOUPは、そんな未来を静かに支える存在でありたいと思っています。

























