急がないホンダのF1、その姿勢に現場として共感する理由

2026年のF1シーズンが、いよいよ本格的に動き出しました。バルセロナで始まったプレシーズンテストを前に、ホンダは新しいパワーユニット「RA626H」を公開し、アストンマーティンとの新たなワークス体制を明確にしています。華やかな話題が先行しがちなF1の世界ですが、今回のホンダのコメントを読んで、私はとても「地に足がついているな」と感じました。
ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長は、「急がず、着実に土台を固めることが、ホンダとアストンマーティン双方にとって最善だ」と語っています。結果を急ぐオーナーや、天才設計者として知られるエイドリアン・ニューウェイ氏がいる中で、この姿勢を貫くのは簡単なことではありません。それでもホンダは、最初の一年だからこそ“積み上げる時間”を大切にすると言い切っています。
この考え方、私たちSOUPの仕事にも通じるものがあります。たとえばセラミックコーティング。早く仕上げようと思えば、工程を省くことはできます。でもそれをやると、数カ月後、数年後に必ず差が出ます。下地処理、脱脂、定着。その一つひとつを丁寧に重ねるからこそ、艶や防汚性、耐久性がきちんと残るのです。

ホンダが言う「組織の基盤を作る」「ノウハウを蓄積する」という言葉は、まさに下地づくりそのものです。F1のパワーユニットも、クルマの塗装面も、いきなり完成形にはなりません。見えない部分を疎かにしない。その姿勢が、最終的な結果を左右する。私はこのコメントを読みながら、日々の現場でやっていることと重なって、自然と頷いていました。
速さを求めること自体は、決して悪いことではありません。ただ、急ぐあまり“定着していない状態”で次に進んでしまうと、後から必ず修正が必要になります。ホンダが2026年に集中しながらも、2027年を見据えているという話も、足元を固めたうえで未来を見る、非常に現実的な判断だと感じています。
速さと安定、その両立はガスプライマーと同じ考え方

アストンマーティン側は、確かにスピード感のあるチームです。ニューウェイ氏の要求に応じてシャシー設計を変え、その影響がパワーユニットの搭載位置やレイアウトにまで及ぶ。渡辺社長はそれを「良いことだ」と表現し、ホンダもそのペースに応えていくと語っています。この関係性が、とても健全だなと感じました。
速さを否定しない。ただし、流されない。これも私たちの仕事とよく似ています。SOUPでは、セラミックコーティングの前工程として、基本的にガスプライマーを使います。これは塗装面の表層を一時的に活性化させ、コーティングの密着性を高めるための工程です。一見すると、ひと手間増えるだけで、仕上がりはすぐには見えません。
しかし、この工程を入れるか入れないかで、半年後、一年後の状態は明確に変わります。水の弾き方、汚れの残り方、洗車後の感触。オーナーさんが「なんか違うな」と感じる部分は、たいていこの“見えない工程”の差です。F1で言えば、今は表に出ない開発の積み重ねが、数戦後、数年後に結果として現れる、そんなイメージでしょうか。
ホンダは2026年のパワーユニット開発に集中しつつ、その中に2027年への布石も組み込んでいると話しています。これは「先のことを考えすぎて今を疎かにしない」という、とても難しいバランスです。でも、現場を知っている人ほど、この考え方の大切さがわかるはずです。
クルマも、F1も、コーティングも同じです。派手な結果や即効性だけを求めると、本質を見失います。時間をかけて、きちんと定着させる。そのうえで、次のステージに進む。ホンダとアストンマーティンの関係を見ていると、そんな“ものづくりの原点”を改めて思い出させてくれます。
私たちSOUPも、目先のスピードより、数年後に「やっておいてよかった」と思ってもらえる仕事を続けていきたい。この記事を読んで、そう感じていただけたなら嬉しいです。


























