静かな夜道に響くポルシェのエンジン音。その瞬間は、家族にとって永遠に忘れられない夜になりました。小学校3年生の私にとって、父は誇りであり、夢を抱かせてくれる存在でした。ガソリンスタンドを一から創業し、中古外車の販売を始めた父は、車に情熱を注ぎ、夢を現実に変えようとしていました。家族は、これから幸せな未来を描けるはずだった――その矢先、父は交通事故で命を落としました。

突然の悲しみが押し寄せ、父を失った私たち3人の子どもを支えるため、母は休む間もなく働き始めました。朝早くから夜遅くまでガソリンスタンドに立つ母の姿は、疲れで少し背中が丸まって見えることもありましたが、「なんとしても家族は私が守る」そんな揺るぎない決意が伝わってきました。幼いながらも、そんな母の背中を見て育つ中で、姉も妹も、そして私も「母に頼らず、自分たちのことは自分たちでやろう」と心に誓いました。

子供達だけで朝ごはんを一緒に作り、できることは自分たちでこなす日々。周りの友達のように家族と過ごす時間も少なく、行事や旅行も諦めるしかない現実が、幼い心に寂しさと無力さを抱かせました。それでも、母の負担を少しでも軽くしたい一心で、自分たちで支え合いながら成長していくしかなかったのです。その日々の中で、自分の足で立つ力と、家族のために生きる強さを学びました。

1971年に父は小さなガソリンスタンドの事業をスタートさせます。 好奇心が旺盛だった父は独学で語学を学び、仕事の合間に度々アメリカやヨーロッパに単身で出かけるようになります。 そして海外のモータリゼーションに目の当たりにし、日本でも外車が当たり前の時代がやってくるだろうと考え、田舎で輸入車販売事業を始めました。 それから頻繁に海外に出かけては車を買付け、出張先の海外から私宛に絵葉書をよく送ってくれました。

「今度日本に帰ったら一緒におでかけしよう」

孤独に耐えて異国を旅する父にとって、家族で過ごすことが何よりの幸せだったのでしょう。

母を困らせたくないという気持ちで、姉と妹と支え合いながら過ごした日々は、いつしか私の根っことなりました。寂しさや不安を抱えながらも自分たちで乗り越えた経験が、今の私を形作っています。そして、父から受け継いだ「車への情熱」と母から教わった「家族のために尽くす姿勢」を胸に、カーコーティング事業を立ち上げました。父と母が私に残してくれた大切なものを、お客様に届けたい。それが私の使命であり、これからも続ける理由です。

32歳という若さでこの世を去った父の意思を継ぎ、地域に役立つ企業として、どんな人でも自由におでかけを楽しめる場を創るために身を捧げる精神をもって創業の精神とする。